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安倍外交に見る「失敗の法則」〈後編〉

なぜ安倍外交はうまくいかないのか

■国連演説とグローバリズム

 総理がプーチンに完敗するきっかけとなったのは、9月12日、ウラジオストックで開かれていた「東方経済フォーラム」で行ったスピーチでした。
 問題のスピーチで、総理は北方領土問題についてほとんど触れないまま、日本とロシアの協力が、輝かしい未来を拓くという旨を謳いあげたのです。これにたいしてプーチンが、ならば年末までに前提条件なしで平和条約を締結しようではないかと切り返し、みごとに一本取ったのはご存じのとおり。

 ところが、それから二週間もたたない9月25日、総理はまたもやグローバリズム丸出しの演説をやってしまいます。
 今回はニューヨーク、国連総会での一般討論演説で。
 いわく。
 https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2018/0925enzetsu.html

 思いますに、日本国民は、自国の指導者に対し、自由貿易の旗手として立つことを切望しておりました。なぜなら日本自身、戦後、自由で開放された経済体制の申し子として、貿易の利益に浴し、目覚ましく成長した国だったからです。

 私は、時に国内の激しい議論を乗り越えて、自由貿易の旗を振りました。TPP(環太平洋パートナーシップ)11が成り、日本が国会でいち早くこれを承認できたことは、私にとって無上の喜びです。また世界史に特筆される規模と範囲の、日EU・EPA(経済連携協定)も成立させました。

 とはいえ、満足してなどいられません。私は自らにドライブをかけ、更に遠方を目指します。
 WTO(世界貿易機関)へのコミットメントはもちろん、東アジアに巨大な自由貿易圏を生むRCEP(東アジア地域包括的経済連携)の交渉に、私は全力を注ぎます。
 そして何よりも、米国との新貿易協議、いわゆるFFRを重んじます。

(※)「FFR」とは、「自由(FREE)」「公正(FAIR)」「相互的(RECIPROCAL)」の頭文字を並べたもの。貿易に関する日米協議の通称。

 
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佐藤 健志

さとう けんじ

評論家・作家

 1966年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業。

 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。

 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。

 主著に『感染の令和』(KKベストセラーズ)、『平和主義は貧困への道』(同)、『右の売国、左の亡国 2020sファイナルカット』(経営科学出版)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)など。共著に『新自由主義と脱成長をもうやめる』(東洋経済新報社)、『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』(VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』(PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。

 2019年いらい、経営科学出版でオンライン講座を制作・配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻、『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻、『佐藤健志の2025ニッポン終焉 新自由主義と主権喪失からの脱却』全3巻を経て、最新シリーズ『経世済民の作劇術』に至る。2021年〜2022年には、オンライン読書会『READ INTO GOLD〜黄金の知的体験』も同社により開催された。

 

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